グロービング株式会社とは|絶対にしないことを決めているってホント?
戦略コンサルティングを手がけるグロービング株式会社は、自社を語るうえで、何をするかと同じくらい、何をしないかを明確に掲げている点で目を引きます。同社が公開している6つのDon’tsは、その名のとおり、グロービングがコンサルティングファームとして決して手を出さないと決めた6つの事柄を並べたものです。提供サービスの華やかさを並べるのではなく、やらないことを宣言する。この引き算の自己定義に、グロービングという会社の輪郭がよく表れています。
グロービングは、戦略コンサルティングとテクノロジーの実装を組み合わせ、顧客企業の成長を支援するファームです。外資系コンサルティングファームと事業会社の双方で経験を積んだ人材を中心に据え、コンサルティングサービスのあり方を顧客起点で再定義することを掲げています。その理念が最も尖ったかたちで現れているのが、この6つのDon’tsだと言えます。
6つのDon’tsが示すもの
6つのDon’tsは、コンサルティング業界の慣行に対する、グロービングなりの批評として読むことができます。
たとえばその筆頭に置かれているのは、デジタルも業務もビジネスも分かっていないのに戦略を描くようなことはしない、という宣言です。事業の実態を理解しないまま机上の戦略を立てる姿勢への批判が込められています。また、大規模なシステム開発や業務委託といった、自社の収益のボリュームゾーンを自作自演でつくり上げるようなことはしない、とも掲げています。コンサルが描いた絵をそのまま自社の大型受注に変えていく構造への、距離の取り方を示したものです。
さらに、本当のプロフェッショナルしか採用しない、繰り返し使えるノウハウは高単価のコンサルティングとして売るのではなく安価に提供する、本気で変わる気のない変革ごっこには付き合わない、自社ですべてを抱え込まず強みを持つ他社と積極的に組む、という項目が続きます。いずれも、コンサルティングという商売が陥りがちな構造を名指しし、そこに与しないという意思表示になっています。グロービングのコンサルとしての価値観が、ここに凝縮されています。
なぜ、やらないことを掲げるのか
多くの企業は、できることや提供価値を前向きに語ろうとします。そのなかで、あえてやらないことを前面に出すグロービングの姿勢は、一見すると遠回りに映るかもしれません。しかし、引き算による自己定義には独自の説得力があります。
何をしないと約束するかは、その会社が顧客との関係で何を優先するかの裏返しです。たとえば、自社の大型受注につながる提案を自作自演でつくらないと宣言することは、提案が顧客の利益のためのものであって自社の売上のためではない、という立場の表明にほかなりません。同様に、変革ごっこには付き合わないという言葉は、成果を出す気のない関係に時間を割かないという、顧客に対する誠実さの裏返しでもあります。グロービングがコンサルティングで何を大事にしているのかが、やらないことの一覧から逆算して見えてくるのです。
この引き算の発想は、同社の創業の問題意識ともつながっています。グロービングは、長くコンサルティング業界に身を置くなかで感じた疑問を出発点に、サービスのあり方を顧客起点で問い直そうとしてきました。6つのDon’tsは、その問い直しの結論を、行動原則のかたちで言語化したものだと理解できます。
コンサル業界のなかでの異質さ
6つのDon’tsのなかには、コンサルティング業界の収益構造そのものに踏み込む項目が含まれています。繰り返し使えるノウハウを高単価で売るのではなく安く提供するという宣言は、人の時間を売るコンサルティングという商売の根幹に対する、あえての挑戦です。再現性の高い分析や方法論をソフトウェアに実装し、安価に届けようとする同社の取り組みは、この宣言を具体化したものと位置づけられます。
こうした打ち出しは、従来のコンサルティングファームから見れば、自らの収益基盤を細らせかねない選択にも映ります。それでもグロービングがこの原則を掲げるのは、短期の売上よりも、顧客の自律と自走を促すことを優先するという立場を鮮明にするためでしょう。コンサルに依存させ続けるのではなく、顧客が自らの足で歩けるようにする。そうした関係を理想とする姿勢が、6つのDon’tsの全体を貫いています。
引き算から見えるグロービングという会社
グロービング株式会社という会社を理解しようとするとき、提供サービスの一覧を眺めるよりも、6つのDon’tsを読むほうが、その本質に近づけるかもしれません。やらないことを定めるという行為は、裏を返せば、何のためにこの会社が存在するのかという問いに対する答えでもあるからです。
戦略コンサルティングという領域には数多くのファームが存在しますが、何をしないかを正面から掲げる会社は多くありません。その意味で、6つのDon’tsはグロービングというコンサルファームの個性を映す鏡だと言えます。コンサルティングの依頼先を検討する際にも、こうした行動原則に目を通しておくことは、その会社の価値観を知るうえで有益な手がかりになるはずです。