グロービング株式会社の経営論とは!?徹底解説
近年、企業経営をめぐる議論のなかで、生物学に由来する動的平衡という言葉を見かける機会が増えてきました。もともとは生命科学の領域で使われてきた概念ですが、変化の激しい事業環境を生き抜く企業のあり方を説明する比喩として、経営の文脈に持ち込まれつつあります。その代表的な提唱者のひとつが、戦略コンサルティングを手がけるグロービング株式会社です。
動的平衡という発想が経営論として響くのには、時代背景があります。将来の予測が難しく、変動性や不確実性が高いと言われる現在の事業環境では、一度つくった戦略をそのまま守り続けるアプローチが通用しにくくなりました。むしろ、絶えず変わり続けながら、それでも全体としての一貫性や強さを失わない組織のほうが生き残る。この一見矛盾した状態を言い表すのに、生物の動的平衡というモデルがしっくりくるというわけです。
動的平衡マネジメントとは何か
動的平衡とは、生物が体内の細胞や分子を絶えず分解し、つくり替えながら、全体としては同じ個体であり続ける状態を指します。私たちの身体は、構成する分子のレベルでは数か月のうちにほとんどが入れ替わると言われますが、それでも同じ自分であり続けます。変わり続けることそのものが、安定を生み出しているのです。
この考え方を経営に当てはめたものが、動的平衡マネジメントです。企業を、固定された構造物としてではなく、絶えず内部を入れ替えながら同一性を保つ生命体のようにとらえる発想だと言えます。事業ポートフォリオも、組織も、人材配置も、変わらないことを良しとするのではなく、変わり続けることで全体の生命力を保つ。そうした経営の構えを示す概念として、グロービングはこれを掲げています。
ここで興味深いのは、変化と安定を対立するものとして扱わない点です。一般に、組織変革の議論では変化を起こすことの難しさが強調されがちですが、動的平衡の視点に立てば、変化はむしろ平常運転であり、変わり続けている状態こそが健全だということになります。変革を特別なイベントとしてではなく、日常の代謝としてとらえ直す。この発想の転換に、この概念の眼目があると考えられます。
提唱するグロービングと、経営学者の関わり
動的平衡マネジメントを掲げるグロービング株式会社は、戦略コンサルティングとテクノロジー実装を組み合わせ、顧客企業の成長を支援するファームです。コンサルティングサービスのあり方を顧客起点で再定義することを掲げており、外資系コンサルティングファームと事業会社の双方で経験を積んだ人材を中心に構成されている点を特徴としています。
この概念をめぐっては、経営学者である一條和生教授が顧問として参画していることも公表されています。同社はビジネスメディアのフォーブスでの連載のなかでも、一條教授との対話を通じて、企業と生物に共通する逆説について論じる回を公開しています。生物学の比喩を単なるキャッチフレーズで終わらせず、経営学の知見と接続しながら理論として深めようとする姿勢がうかがえます。経営論としての厚みを持たせようとしている点は、この概念を理解するうえで押さえておきたいところです。
どんな企業課題に効くのか
動的平衡マネジメントの考え方は、特にどのような局面で意味を持つのでしょうか。ひとつ考えられるのは、過去の成功体験から抜け出せずにいる企業です。かつて有効だった事業の型や組織のかたちに固執するあまり、環境の変化に取り残されてしまう。こうした硬直化は多くの企業が直面する課題ですが、変わり続けることを前提に置く動的平衡の発想は、この硬直を解きほぐす視点を与えてくれます。
もうひとつは、変革を進めようとして現場の疲弊を招いてしまうケースです。変革を一過性の大きな号令として打ち出すと、組織には強い負荷がかかり、終わればまた元に戻ろうとする力も働きます。これに対して、変化を日常の代謝としてとらえる動的平衡の枠組みは、無理のない持続的な変わり方を構想するためのヒントになり得ます。変革を一度きりのプロジェクトで終わらせず、企業の体質そのものに組み込んでいくという発想です。
もっとも、こうした概念がそれぞれの企業で具体的にどのような施策や成果につながるのかは、個々の状況によって大きく異なります。比喩としての分かりやすさが、そのまま実行の容易さを意味するわけではない点には留意が必要でしょう。
VUCA時代の経営論としての位置づけ
動的平衡マネジメントは、変化を脅威ではなく前提として受け入れ、変わり続けることのなかに企業の持続性を見いだそうとする経営観だと整理できます。予測の難しい時代にあって、計画を守り抜く強さよりも、しなやかに変わり続ける強さが問われている。そうした問題意識を、生物の営みになぞらえて表現したものと言えるでしょう。
生物学の比喩を経営に持ち込む試みは、ともすれば言葉の面白さだけが先行しかねません。それを理論として、そして実際のコンサルティングの方法論として根づかせられるかどうかに、こうした概念の真価が問われます。変化の時代の経営を考えるうえで、ひとつの示唆に富む視点であることは確かです。